銭湯にまつわるエトセトラ2

職業選択の自由(銭湯編)

「お風呂屋さんって京都に何件ぐらいあるんやろな」と話していると、司法試験の勉強で脳味噌半分は判例で埋まっている友人が言いました。
「距離制限っていうのがあるから大体同じぐらいの間隔であるんとちゃうの?」
「へぇー、そんな判例あるの?」
「知らんの?結構有名やで。」
ということで、昔授業で一・二回しか使ったことがない判例六法を本棚から引き出し見てみると、ありました。
日本国憲法のかの有名な第二十二条「職業選択の自由」に関しての裁判で。

日本国憲法第二十二条@何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転および職業選択の自由を有する。 A何人も、外国に移住し、または国籍を離脱する自由を侵されない。 

職業選択の自由

公衆浴場は多数の国民の日常生活にとって必要不可欠の厚生施設であり、その偏在は利用に不便をきたし、その濫立は無用の競争を生み、経営を悪化させ、ひいては衛生設備の低下等の影響を及ぼすおそれがあるから、国民保険・環境衛生の観点から、その適正配置を経営の許可条件の一つとして挙げることは、本条に違反しない。(最大判昭30・1・26)

公衆浴場の適正配置につき

積極的・社会経済政策的な規制目的に出る立法は、その手段が立法府の裁量権を逸脱し、著しく不合理であることの明確な場合に限り、違憲とされるが、公衆浴場法に定められた公衆浴場の適正配置規制と距離制限は、公衆浴場業者が経営の困難から転廃業することを防止し、健全で安定した経営を確保し、国民の保健福祉を維持するためのもので、手段として十分の必要性と合理性を有しており、違憲ではない。(最判平1・1・20)

うーん、なるほど。よく分からんが、風呂屋のすぐ近くにもう一軒風呂屋を建てたらあかんということですな。納得。

料金改定
銭湯の料金は近年一年に10円ぐらい上がっています。
今回(2000/10/01 )は
大人340円、中人130円、小人60円
から
大人350円、中人140円、小人60円 に値上がりしました。
銭湯入浴料は物価統制令下において決定される特殊なもので調べてみると面白いです。
それについてはまたレポートします。

私を銭湯に連れてって!!
「一緒に出ようって言ったのにいつも私が待たされた♪」とかぐや姫が歌ったのは1970年代でして、同じ頃流行った「同棲時代」という漫画なんか見てても男性上位の世界観で描かれているわけです。
だから僕はずっと女性が銭湯で待たされるのは「女性が遠慮して時間通りに出てくるのに男はダラダラ煙草でも飲んで遅れて出てくる」のが許された過去の風景だと解釈していたのですが、銭湯での会話、風景を見聞きしていると、女性が強くなったといわれている現在でもなぜか待たされるのは女性なようです。

若い男女のカップルだと大体男性の方が銭湯に入り慣れているんですね。風呂無しの下宿に住んでいる男性は沢山いるけど、女性で風呂無しっていうのは滅多にない。だから銭湯っていうのは数少ない男性が主導権を握っていられる場所なんじゃないかと思ったりもするのです。スポーツ新聞とか男性の脱衣場にしか置いてないところも多いみたいで。

かといってそうそう湯上がりの女性を店の前で待たしていられないし、最近の去勢された優しい男性諸君は、待合室(ロビー)のある銭湯を選ぶ訳です。待たされる方も待合室でジュースやビール飲みながらテレビでも見てれば、喧嘩にはなりませんし。洗い髪が芯まで冷えることも無くなります。
同時にお互いに冷えた体を温めあうこともなくなりますが、それは便利になることの代償です、あきらめましょう。そういう待合室がある銭湯には駐車場があるところが多いので、暑い夏も雪の降る冬も快適に入浴できます。

と、ここまでは銭湯初心者用。
たまに銭湯にいく人なら快適な大型店に車で行ってもいいが、毎日銭湯という上級者、常連さんは、やっぱり家から一番近くの銭湯に行きたいもの。最寄りの銭湯が番台式で、待合室が無い場合、彼女と一緒に暖簾をくぐり「おばちゃん、二人分な」とチケットを二枚渡します。そこで「じゃ、40分後ね。」なんて言ってはいけません。常連はそこんところ以心伝心。自分があがる頃になったら、一つ壁を隔てたむこうで、ほんのり上気してるであろう彼女に向かって「おい(彼女の名前でもいい)、もう出るでー」と声をかけましょう。最初のうちは、恥ずかしいですが、そのうち快感になってきます(ウソ)。そんなことをしなくても番台のおばちゃんが「もうお連れさん、服着て待ってはんで」と教えてくれます。

超上級者になると浴室の壁をこえてシャンプーや石鹸や子どものキャッチボールをしますが、それは危ないのでやめましょう。特に子どもは落ちて頭打ったら大変です。石鹸はタオルにくるんで渡すと危なくないですけど。

さあ、みなさん、彼氏、彼女と一緒に銭湯に行って自分達流の楽しみ方を見つけてください。
そしてこれはいい!というのがあったらメールしてね。