銭湯にまつわるエトセトラ

京都銭湯入浴記ついてのいろんなこと

私の銭湯初体験

突然ですが、子供の頃から「ぼくの家って、どうも地域に馴染んでないんだなー」と思ってました。近所付き合いってきちんとするだけが能ではなくて、互いに弱みを見せ合うとか、微妙な感覚が必要なわけですけど、そこんとこ私の家は自己完結してたというか、折目が正しかったというか。家族の中では外との関わりを持ちたい方の人間であった私は子ども心に居心地が悪かったもんです。

そんな幼い私が特に地域共同体から取り残されたように感じるのが、「みんなが銭湯に行く夕方」でした。当時は結構風呂のない家が多く、近所の人が連れ立って銭湯に行き、帰りには一杯飲んだおっさんと、ジュースでも買ってもらった子どもがサンダルの音響かせながら帰ってくる。なんか羨ましいなー、たまには一緒に行きたいなー、でもだめって言われるしなー、とモンモンと過ごした子供時代。人前で裸をさらしたりするのが嫌だった自意識過剰なお子様だったんですが、なんか銭湯には憧れがあったんです。

そのうち中学生になり、喘息に効果がありそうなのと足速いとモテそうだったからという理由で、陸上部に入りました。長距離だったので来る日も来る日も朝昼晩と走りまくりました。私の中学校、何を隠そう東大阪中学校駅伝で9連覇したこともある(連覇を止めたのは私が二年生の時、生まれてきてすみません)名門で殺人的な練習だったんです。筋肉の疲労が極限に達した時に行こうと思い立ったのが銭湯。本当にドキドキしながら行きました。
大坂の銭湯は今でもよくわからないけど、洗髪料、サウナ別料金制、ってのがあったりで、小遣いの少ない私には恐ろしい世界でした。でも一度湯船に浸かってしまえば極楽、今でも印象に残っているのが電気風呂で、ふくらはぎとか膝をマッサージしながら明日の試合に備えたもんです(頭の中のBGMはもちろん爆風スランプの「ランナー」)。

最近、実家に帰った時、銭湯の名前なんて言うのやったかな、と見に行ったら、歯医者さんに変わってました。そういえば私の実家の近所も建て替えて風呂のある家ばかりで、日曜の昼下がりに風呂上りのおっさんが集まってビール飲んでる風景もなくなりました。

麗しのフィットネスクラブ
これから風呂無しのアパートなどに住むという下宿生にとって、「どうやって風呂代を浮かすか?」というのが生活の大命題になってくる。大体風呂無しのアパートにすむ時点で貧乏が前提やしね。そこでまずはじめに考える(?)のが、風呂付きのマンションに住んでいる彼女を作ること、だが妄想で終ることがしばしばだ。月曜は田中くん、火曜は鈴木くんと、友人の家の風呂を転々とするのもありだが、もらい湯ってもんは気が引けるし、経済的にみても友人との飲み代考えたら馬鹿にならない。
毎日銭湯に行くしかないのか、ああ、340円か(2000年4月現在)、高いけどしゃーないな、とあきらめて銭湯通いをする人が大半であるが、中には試行錯誤繰り返す人間も入るわけで、私もそんな一人だった。

340円x1ヶ月25日で8500円。少し家から遠いけど京都市営浴場は200円で入れるし、組み合わせれば7000円でいけるか。でもなー、なんか芸が足りない気がする。もっと、ポジティブにアグレッシブに文化的に生きようじゃないか、そうだー、フィットネスクラブだー。あそこなら風呂に入れるし、トレーニングも出来るし、友達も出来やすいし、あわよくば風呂付きのマンションに住んでいる彼女もゲット出来るかもしれない(結局そこに戻るのか)。

私の下宿の近くには結構フィットネスクラブが多いので、色々見学にいって、北大路にある某クラブに決めました。7:00-23:00営業で、火曜日定休、フルタイム会員1ヶ月9500円也。最初のうちは新鮮な気持ちでバイクなんかこいでトレーニングしたあとに一風呂って感じだったが、忙しくなってくると夜22時過ぎにいかにも「風呂だけ入りに来てます」みたいな格好で行かざるを得なくなる。しかしショッピングセンターの中にある所なんで風呂桶にタオルで、といういでたちでは行けず、バッグに荷物つめてオスマシしていくわけだ。客だからいいじゃないと思うけど、風呂だけ入りに行くっていうのに抵抗がある自意識過剰のお子様の私は半年でノックアウト。

銭湯マニアの読者としてはどんな風呂だったかを知りたいと思うので、いちおう書きます。普通の湯船と水風呂、サウナ、カラン、シャワーで、極めてオーソドックス。でも夜になると混みますよ。体洗うのに待ちが必要です。結構私と同じで風呂入りに来ている人が多い、という訳でもなく、プールに入ったあとついでに風呂に入ってから家に帰る人が多いから。だからプールの消毒液臭い浴室です。
だいたい友人の話を聞いても試行錯誤はみんな失敗している。やっぱり銭湯が一番落ち着くらしい。上京の下宿生は最寄の銭湯に週4日通って週2日は酒飲んだりで行くタイミングを逸して、週1日は船岡温泉でゆっくりする、っていうのがセオリーらしい。