2004年9月 火曜日22時
妙心寺前の交差点から南側一方通行を下がり、竹林禅寺の角を東に行くと御所の湯の看板。さらに東に行くと南北に安井商店街が広がるが、この界隈は夜は静かな住宅街、東隣は理髪店で向かいはタバコ屋。屋号は町名に由来しているが、ここに御所があったかどうか(「御所」は天皇だけでなく関白など身分の高い人の邸宅を意味するときもある)はさだかではない。ちょうど雨の日に原付で行ったのだが、店の横にテラス屋根がついている駐輪スペースがあり重宝した。外観は2階建てのモルタル、スッキリ改装されている。
奥行きのある玄関スペースをとおり、左側の男湯へ。脱衣場にはいると虫の音が聞こえる。リーリー、これは鈴虫だな。話に聞いたところによると女湯の脱衣場で鈴虫を飼っており、晩夏にはこうして鳴くのだという。一番盛んなのが8月後半だとご主人。鈴虫は越冬もするが同じ水槽では数年で弱ってしまうらしい。ロッカーはキング、木目が効いた天井、イチゴソーダ50円からズラッと料金表に書かれているお風呂ドリンクはフルラインアップ。脱衣場に出張ったサウナの上に黒招き猫、手前の休憩スペースはベンチと本棚があるが、小説に漫画に加えて「四季報」があったりとバラエティーゆたか。
浴室前スペースは1段差、浴室は青天井に壁はクリーム色タイル基調にところどころに焼き付けのアクセント、数本ある柱はあい色のムラ焼き付け、床は珍しい石風タイル。男女壁には50センチ四方の新しい日本画タイル絵がはめ込んであって、画題は枝にとまる小鳥だったりチューリップだったりする。なかなか見る目にも楽しくなっている。浴槽枠は赤御影、カラン台は黒御影。
浴室手前は島カランがある洗い場スペースで奧に浴槽が並ぶ一見すると東京型なのだが、浴室中央に円形の深風呂が据えられて、それにくっつく形で複合風呂が奧に並んでいるところなどは京都のアイランド型浴槽の発展型ともいえて面白い。聞くと昭和43年に大改築をして浴室が大幅に奧に広がったらしい。最初は私一人だったが、雨が上がってくると客もポツポツと来はじめた。外は雨なのに脱衣場では鈴虫の音がゆったりとした時間を奏でる、なかなかぜいたくな銭湯だった。
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