弁天湯の入浴記

所在地・交通 右京区太秦安井藤ノ木町3
休日 日曜日
営業時間 16:00-23:00

印象・規模 昭和中期の面影を残す銭湯。土間番台式、男湯左側、カラン16席(すべてシャワーあり)。
湯船・お湯 中央に横長の深・浅の主浴槽と奧に電気風呂とジェット風呂。奧の壁には岩のレリーフと魚に乗った子ども。
ジェット風呂 2基、勢いは弱い。
電気風呂 正真正銘のドクドク型。

感想

2004年10月 土曜日21時

西小路太子道の交差点「藤ノ木町」、北に一本上がった旧二条通り。今ではすっかり商店が歯抜けになってしまった安井商店街、「旧二条京極」である。京都では寺町の新京極にちなんで商店街に○○京極とつける例が多い。今ではすっかり「旧二条京極」と呼ぶ人も少なくなった、そういう私も弁天湯の脱衣場にあった鏡広告でその名を初めて知ったぐらいだ。往時は栄えていて年末などは人だかりで歩きにくいほどだったという。その商店街の一角、理髪店の角を少し奧に入るとのれんが見える。今は建物に囲まれてよく見えないのだが、外壁はアールデコの意匠が施されモダン、腰回りまではタイル張りである。

のれんをくぐると土間と脱衣場は一望できる開放的な造り。表通りから奥まった立地だから玄関をつけずに土間式のままでも良かったのだろう。のれんが風にそよいだら表通りにハダカ丸見え、では現代社会は許してくれない(私はまったくかまわないけど)。脱衣場、浴室とも横長で・・、なんと番台まで横長の長方形で入り心地は悪そう、番台の角にテレビを置いて奥さんは外で客の世話をしている。

ちょうど組合主催のおふろ祭りが開催されていて、土曜日が子ども無料、日曜日がくじ引きなのだが、土曜日なのに奥さんがくじ引き箱を差し出してくる。「あれ、今日は子ども無料だけじゃないの」と言うと「明日定休日やから」・・??!!なるほど〜、思わぬラッキー。結果は残念賞のジュースだったが得した気分。

脱衣場は高い格天井に床が木張りの上に籐ムシロを敷いている伝統的タイプ。ゆったりとした時間と風がながれる。IDEAL錠のロッカーがあるが、みんな脱衣かごに服を入れて床に置いて浴室に行く。石田の大型アナログ体重計、平台のショーケース型冷蔵庫にはお風呂ドリンク。

浴室前には上部にパノラマのモザイクタイル絵。横に長い造りなので、男湯部、中央部、女湯部の3部構成の圧巻パノラマ。図柄は海に浮かぶ船に浜辺の松、端に橋が架かっている(ダジャレじゃないです)もの。そして壁と腰回りにはハートを4つ組み合わせたクローバー柄のモザイクタイルがハイカラ。柱の水色長方形モザイク、床の水玉モザイクと凝っている。浴室前は3枠の2段差。

浴室は昭和レトロのひとこと、昭和35年の改修からいじっていないというので43年前、そのまま。横長の浴室なので手前から奧にかけての天井アーチに横長湯気抜き、天井の縁と男女壁の上に小豆色と水色のモザイク縁取りがアクセント。壁は白タイル、床は白タイルに水色を組み合わせたもので、昔のタイルは配置を工夫しているなあと関心。浴槽枠は小豆色のタイル、カラン台もなんと水色の長方形モザイク。床に溝が掘ってあるところも昭和中期の名残。上がり湯用の立ちシャワーが入口付近に。

浴槽は中央に横長の深・浅の主浴槽と奧に電気風呂とジェット風呂。レトロな銭湯なのに意外と若い客が入れ替わり立ち替わり、なぜかみんな早風呂。私もつられていつもより早い目に。カランシャワーが不規則に勢いよくなったり、鏡広告に「国鉄花園駅」とあるのはご愛敬。そうそう、ここの電気風呂が今は少なくなったドクドク型(電気風呂はジーン型、バリバリ型、ドクドク型に大別される、私が勝手に分類している)で、おおらかなリズム、味がある。湯上がりは脱衣場でぼんやり、10月も後半だが表の引き戸は開けっ放しで、のれん越しに涼しい風が入ってきてバスタオル要らず。非常に開放的な気分になる銭湯だ。