金沢夢芝居

金沢旅行記
2001年8月

金沢夢芝居・・・、といっても「恋はいつでも 初舞台♪」な梅沢冨美男とは関係ない夢幻の如く消えてしまったかに見える金沢の芝居の跡形をなぞってみたいという衝動にかられた
全国的に歌舞伎が盛んだった文化文政から幕末にかけて金沢でも芝居の定小屋が藩により許可される。
中でも大規模なのが犀川の川上芝居だったらしい。江戸や上方の影響を受けながらも独自の金沢歌舞伎文化を花開かせる。
往時の面影が少しでもあるかと当地を訪れたが、河川敷の公園があるのみ。お年寄りの話を聞いても記憶にあるのは香林坊の演芸場や映画館ぐらいだという。そりゃそうだな、江戸、明治の話だもの。
「芝居小屋」は跡形も見つけられないし、ちょうど訪れた時期がお盆だったので、面影探しと供養の為、卯辰山のふもとの蓮覚寺へお参りに行く。
嵐冠十郎(四世)(あらしかんじゅうろう) 1853−1925の墓があると「石川県大事典」に書いてあったんだ。
金沢歌舞伎の大看板だったそうなので、立派な墓があるのかなと墓地を探してまわったが見つからず、住職さんに聞いたところ、訪れる人が途絶えたので無縁仏にしたという。
そこで私は無縁仏の墓に手を合わせる。
あとで聞いた話だが、歴代の前田藩主はじめ多くの金沢人が眠っている野田山墓地に、この4世嵐冠十郎の墓碑があるという。蓮覚寺の方が「冠十郎さんの息子さんか何かが野田山に祀られてるよ」とおっしゃっていたが・・。じゃあ、蓮覚寺の無縁仏はなんなんだろう?誰なんだろう?3世か?
役者は親の死に目に会えない、畳の上では死ねない稼業、と昔は言われてたんだから、死んだ後ぐらいちゃんとした居場所を確保してあげないと・・。現在、名跡を継いでいる6世の冠十郎はどう考えているんだろう。
さて、古いものばかり見てても仕方ないので現在に目を向けて、北陸随一のナウでヤングな町、竪町を探索。
噂では「金沢の原宿」と言われているらしい。
道幅が広くベンチが多いのでなかなか良い雰囲気です。
昭和45年に日曜歩行者天国を作って以来、いまでも進化し続けている商店街です。
この商店街から犀川大通りを越えたところにある新竪町商店街は昔ながらの道幅が狭い町。大通りが邪魔をしてなかなか人通りがなく再開発されなかった商店街。この二つの商店街を見比べると栄枯盛衰を感じちゃうな。
竪町商店街
http://www.tatemachi.or.jp/

旅行して、その土地の小劇場の公演を見てみたいな、と以前から思っていたので、前もってネットで「金沢 演劇」と検索して前売り扱いのクーポンをプリントアウトして持っていった。
開演まで時間があったので小屋の前の公園で休んでいると、なんと地面からスモークがわいてきた。何だ、サリンか?と一瞬ひるんだが、毎日この時間になるとスモークがでる演出らしい。
子どもやカップルが楽しそうにスモークの中に入っていってキャッキャッいっている。
写真は夕日とスモークの中で飛び跳ねている子ども、の図。
う〜ん、幻想的でいい写真だ・・、ちょっとピカドンみたいだが・・。
竪町には以前、吉本劇場があって、お笑いライブをやっていたが数年前に潰れたらしい。そのあとに【ti:】’s HALL(竪町劇場)っていうのが入ったが、そこが今日の会場。
見たのは「劇団110SHOW」の[SPICE PIE」 。
「げきだんいっとうしょう」と読むらしい。
打ちっぱなし・配管むき出しの今風のハコの真ん中に舞台を作り、四方に客席。スパイの話、ドタバタコメディが展開される。
う〜ん、よくわからんが金沢の演劇恐るべし?
関西とは味が違うと思ったが、今の時代そんな地域性ないよなあ。わからん・・。
その演劇の中で「昨日女子寮に行って来たよ」って感じでネタに使われていたハッスルパブ「女子寮」。
金沢市内に8店舗を展開する金沢っ子なら誰でも知ってる有名店、と思いきや、観客層が若い女の子が多かったせいかあまり反応なし。
昼間、町をブラブラ歩いてたときに何軒も見かけたので気になっていた私はそのネタで不覚にも、ぷっ、と笑ってしまった。
ハッスル、ハッスル!!
金沢といえば「加賀宝生」、謡曲の宝生流が盛んである。

兼六園の横にある石川県立能楽堂ではこの夏に毎週土曜日「観能の夕べ」を開催していた。なんと入場料が1000円(高校生以下無料)なのである。私は常々、その土地の文化レベルの高さは、観劇料の高さに反比例すると思ってるので、ちょっくら感心したのである。
写真は書店の謡本売り場。
大型書店には謡本売り場があるが関西ではほとんど観世流を扱うのみ。金沢に来て初めて宝生流の謡本売り場を見た、感動した!
金沢をぐるりと周り、盛り場の隅に寂れながらも興行を続けている小屋がないかな、と巡ってみたが見つからず。
仕方ないのでちょっとでも芝居に関係ありそうなポスター2点。
左は北陸大学のポスター。北陸道といえば、安宅の関での武蔵坊弁慶が読んだ勧進帳!それを女性のモデルが被写体になって、「青春の舞台がここにある!」というフレーズ。倒錯した魅力。
右は近江町市場で店先に大衆演劇のポスターをべたべた貼っている店を見つけたので写真を撮らせてもらう。市街地に芝居小屋はなくなったけど、郊外の温泉・ショッピング施設に併設した劇場が金沢の近くにある(松任市の車遊館)、そういえば、そこのチケットをおでん屋の女将さんにもらったんだ。
金沢の香林坊といえば、かつての北陸一の映画館街
数年前、金沢を訪れた際、プレイガイドのお姉さんが最近郊外に大きい映画館(シネコン)が出来てきているからここらへんの映画館は廃れていくよ。もう一軒潰れたし、といっていたが、今回訪れたらさらに数軒潰れていた。

飲み屋がいくら沢山あっても、映画館や芝居小屋やストリップがない町は何かしら色気がないなあと感じるのです。
金沢夢芝居、おしまいおしまい。