桑名湯の入浴記

所在地・交通 金沢市東山3-1-5、駐車場5台有り
休日 月曜日
営業時間 平日13:00-0:00、日祝11:00-0:00、コインランドリー併設
印象・規模 川端のコミュニティ銭湯、カラン18席。
湯船・お湯 浅い泡風呂、深いのジェット、薬用ミネラル温泉をつかっている熱めのお湯。つねにお湯が溢れ出て浴槽周りの溝に入り循環するようにしている。
スチームサウナ ピンクの壁とグレーのベンチが落ち着く。熱いのでタオルをしいて座る感じ。
水風呂 暑い日には欠かせません。そんなに冷たくないよ。
ジェット風呂 2基あり、薬用ミネラル温泉。
薬用風呂 ジッコウ湯。ぬるめ。
感想
2001年7月

金沢に着いて一軒目の銭湯。一軒目でこんなに素晴らしい銭湯に逢えると思わなかった。
「女川」と呼ばれる浅野川に架かる浅野川大橋のほとりに桑名湯がある。対岸からも鮮やかに見える「くわな湯」という看板にひかれて入る。昼間だというのに店先に立っていると女湯からの姦しい声が聞こえてきた。

牛乳石けんの象が描かれたシンプルな暖簾をくぐり、券売機でチケットを買う。そのうえには招き猫が鎮座して、壁には額が掛かっている。常連さんから送られた「祝・新装開湯」のその額に期待は高まる。
番台でチケットをわたし、脱衣場を眺める。中央にベンチがあり、常連さんが新聞を読んでいる。ちょうど参議院選の応援演説で小泉首相が金沢入りしていた日なので、政治談義に花が咲く。

ロッカーは窓付き、プラスチックのカゴがロッカーにあらかじめ入っているのだが、カゴの大きさとロッカーの大きさがピッタリでカゴが出し入れできないようになっているのである。旅先でこういう光景を見るとすぐに「金沢ではこうなんだ」と早合点してしまう現金さに、ちょっと自分で落ち込んだり。
本棚を見やれば、漫画がすごい品揃え、「コータローまかりとおる」「バナナフィッシュ」、・・「カムイ外伝」なかなか・・。それに美容院のパーマ器のような旧式のドライヤー、天井扇風機、マッサージ機、健康器具のステップマシンと銭湯アイテムバラエティゆたか。新聞も北国新聞、中日新聞で旅情を駆り立てる。

さあ、浴室だ。神棚が設置してある下の引き戸からはいる。あれ、浴室がが脱衣場よりも低くなっていているんだな。京都とかだと浴室入口が玄関みたいになっていて「浴室に上がる」という印象なのに。
浴室天井は白クリーム色、湯気ヌキがない。男女壁沿いに浴槽群、薬用ミネラル温泉がふんだんに流れ出ては溝に吸い込まれる様は清涼感溢れていい。男女壁上部はブロックガラスで開放感をだしている。浴槽枠は黒花崗で重厚感。
円鏡のカランに陣取って身体を洗う。なかなか繁盛している銭湯である。何度か水風呂とジッコウ湯を往復して出る。〆は全身シャワー。

脱衣場でくつろいで辺りを見回すと子どもの字で感想を書いている張り紙が目にとまった。尋ねてみると小学校の社会学習で「銭湯を体験しよう」というのがあってその感想だそうだ。中に○○さんのマジックがよかった、という感想があり、聞くところでは常連さんにマジックの上手い人がいて子ども達に披露したんだそうな。社会学習で銭湯、という発想もユニークだが、それを常連さんがもてなして一緒になって楽しむというのは、ほんま素晴らしいことです。

なんでもくわな湯さんには「語爺会(ごじかい)」という常連さんの親睦団体があるらしい。界隈の職人さんが毎日夕方五時ぐらいに銭湯に集まることからそういう名前を付けた。俳句を詠んだり、近くの居酒屋で飲んだりしているそうだ。「職人さんは裸見たら、何を仕事としてるかわかる」って誰かがいってたが、その通りだとおっしゃった。
ちょうど私が訪れた日の中日新聞の投稿欄にその小学校の社会学習の時の交流の風景が載っており、みなさんがまわし読みをしていた。そんな光景に感動して、番台の女将さんと話していたらジュースをおごってもらった。なんていい銭湯なんだ!

北陸ローヤルボトリングの「さわやか」というお風呂ドリンクを飲む。瓶の王冠の裏に当たりが付いていて、なんと「当たり」だった、それで20円もらう。なんだか申し訳ない(笑)
いやー、いい湯だった、と外に出た。外にもベンチが置いてあって、しばし浅野川を眺めながらベンチに座り、行き先を考える。風呂上がりに川辺の風が気持ちいいんだ。

銭湯の良さって、スーパー銭湯みたいに設備が充実している、ボロボロの銭湯だけどキッチュなアイテムが沢山、だとかいろんな基準があるけど、常連さん同志が仲がよくてしかも排他的でない、っていうのは最高に嬉しい気分にさせられる。