浜添湯の入浴記

所在地・交通 長田区浜添通1-1-10
休日 月曜日
営業時間 15:00-22:30

印象・規模 2号線から一筋入ると石浴槽のレトロ銭湯。カラン10+シャワーなし2席。
湯船・お湯 男女壁沿いに上がり水の水槽、隔てて奧に深風呂、泡のすわり風呂。
すわり泡風呂 奧に、お客は必ず入っていた。

感想

2004年7月火曜日の16時

浜添湯天王温泉に入り納めをしたついでに普通の銭湯にも入っておこうと浜添湯に。西日本を横断する幹線道路である2号線の東尻池西口交差点を南に一筋入った角地、南隣(銭湯からすると裏になる)は理髪店。50メートルほどしか離れてないのに2号線の喧噪から解き放たれたおっとりと、どっこいしたたかな下町風景、商店がポツポツと建ち並ぶ。浜添湯の西隣は豆腐屋、スナックと続くが、その隣にはラーメン屋台の倉庫があって、大八引きの屋台が出発を前にしている懐かしい風景。私の小学校への通学路にもラーメン屋台の親方の家があり、何台もの屋台が泊まっていて、昨夜の残り香をプンプンさせていたのを思い出した。


浜添湯の外観はモルタルの囲い塀の腰回りに緑色のタイルを巻いてあり、塀の向こうの前栽にはあふれんばかりの樹木が育っている。建物の横にまわると浴室の外壁がレンガ積みなのが分かるが、その前にちょこんと鎮座したほこらがかわいらしい。のれんをくぐるとそこはレトロワールド、モザイクタイルの床に上がりは使い込まれて照り上がった板の間、オシドリロッカーに番台裏の梅にウグイスをあしらったタイル絵も無粋にポスターが張られているものの健在、男湯は左側。


番台は京都型の低いものに慣れている私にとってはちょっと高め、番台から見下ろされると違和感があるのは地域差か。番台の上にはちょうちんがたくさんぶら下がった神棚、地域の氏神だろうか。体重計はKOBE KOKI(神戸衡機)、やっぱり地場産はいいよなあ。壁掛け時計は愛知時計の古いのだが、中にカップルの人形が入っている、私たちとらわれの身って感じ? 他には木製のマッサージ機が基本アイテム。左右両方の壁にロッカーが配置されているのは大阪・神戸型か、もちろん京都のようにロッカーにかごは入らないタイプ。


浴室前スペースは1段差で狭い、今はクーラーが置かれている男女仕切り部分にまたがって全体にモザイクタイルで仕上げてある。模様があるのでクーラーに隠れて全体が見えないのが残念だ。浴室は・・、なんと浴槽が石でできている! しかも床も石敷き! 石の浴槽は縁に背中をもたれてじっくり入ると体の芯まで温まっていいんだよなあ。床は全体に石敷きで石の継ぎ目にレンガでステッチが入っている。レンガのステッチには実用的な意味があるのか装飾なのか、かなり大味なデザインが野性的でかっこいい。浴槽配置は、まず男女壁沿いに上がり水の小さな石の水槽、これは男女共有のものでそれぞれから手を伸ばせば壁の下で握手できそうだ。それからカランを2台隔てて、浴槽枠が石の深風呂、浴槽周りにぐるりとカラン台がある大阪タイプ。一番奥には泡のすわり風呂。常連さんが浴槽の縁に黙って腰をかけている、・・居眠りしてるな。


カランで体を洗う。私は一見だからと脱衣場側の端を使ったのだが、石敷きの床は浴室中央の溝に向かってかなり傾斜がかかっており、カラン台には排水溝が掘ってないから、使った湯が全て床を伝って中央に流れていくわけ。私は大丈夫だけど、潔癖性の人は嫌がるかも。ここでは中央の溝に遠い方が上座なのだと思う。よく銭湯のカランには上座下座があるとか指定席があるとかいう話を聞くが、今の利用客が少なくて設備が新しくなった銭湯ではそれを実感することができない。私は浜添湯ではじめて得心できた。なるほどね〜、勉強勉強。


浴槽壁は白タイル、途中に目の高さくらいに藍色ラインでアクセント、壁の上部はトタン張りになっている。これらも震災の時には全部崩れたんだろうな。男女壁の上には石の屋根が載せてあり、全体的に石尽くしな感じ。


湯上がりにお風呂ドリンク。銘柄のない黄色いジュースがあったので、なんだ?と思ったが、普通のみかん水だった。脱衣場中央のソファーでぼんやり、照明の薄暗さが雰囲気にマッチしている。表の方にガラス戸を開けると縁側があってトイレに行けるが、客が多かったころはここまで人があふれて縁側で前栽を眺めていたんだろう。


浜添湯からほんの数百メートル東に歩けば、地名の浜添通から想像できるように埋め立て地に川崎重工の広大な工場が広がる。2号線と海に挟まれた下町、旅人にはさわりきれないが、おもしろい。