薬師湯の入浴記

所在地・交通 下京区不明門通松原上ル因幡堂町699
休日 土曜日
営業時間 15:00-23:30

印象・規模 因幡堂前の個性豊かな銭湯。番台式、男湯は左、カランは20席(シャワーありが6席、なしが10席、島カランが4席)。
湯船・お湯 浴室中央の男女壁に沿って半円形の複合風呂があり、手前から泡浅風呂、人間洗濯機、深風呂、薬用ジェット風呂。奧に水風呂と水シャワー室。
サウナ 2名程度、脱衣場にあり有料。
水風呂 浴室奧、冷たい。浴槽半分が寝風呂状になっている。
薬用ジェット 浅風呂タイプ。
泡風呂 浅風呂に。
人間洗濯機 浅風呂に併設。一方向を向いた4つのジェットがあり、水流が生まれる。

感想

2004年9月 木曜日の22時

烏丸高辻の北西角は京都銀行本店。そこからから烏丸通を挟んで東に大きな石門というか石碑があり「いなばどう」と書いている。その道を進んでいくと周囲にのぼりはためく因幡堂(平等寺)。なんでも長野善光寺の阿弥陀如来、京都嵯峨清涼寺の釈迦如来、と並んで「三如来」と称される薬師如来が本尊らしい。因幡堂といえば、狂言の演目にもあるし、江戸時代の芝居小屋番付には「京・因幡堂」の名前が大きめで書かれていた。古くから庶民の信仰を集め、その周辺は賑やかな雰囲気だったことがしのばれる。

その因幡薬師の門前にあるから薬師湯。夜に行くと因幡堂の門前に屋台をかまえるおでん屋と薬師湯の看板がどちらも素朴な味。都会の真ん中でこういう雰囲気もいいなあとぶらついていると背後から「ヴワン、ヴワン!」と犬の鳴き声。ビックリして因幡堂を振り返ると寺門のうちに放し飼いをされている巨大な白い犬が2匹、こっちをむいて狂わんばかりにほえたてる。ああ恐かったと薬師湯の屋号が染められたのれんをくぐり玄関スペース。外観はテント屋根でシンプルな温泉マークの看板。男湯は左側、脱衣場へ向かう引き戸は自動ドア。番台は・・、う〜ん、番台の囲いが取れた机が置かれて、その前でご主人がパソコンをカタカタ。後ろの棚には演歌などのカセットテープがズラリと並んでおり、その姿は風呂屋の旦那さんというより編集部のデスクといったところ。

入浴料金の他にサウナ料を50円払う。薬師湯は京都では珍しくサウナは別料金なのである。バスタオル付きで100円、バスタオル持参だと50円。常連向けにはサウナ券を発行しており50円券15枚(750円分)が500円で販売。ということでまずバスタオルを巻いて脱衣場の中にあるサウナに入る。2名程度の小振りだがふかふかのじゅうたん張りでしばしの別世界という感じ。別料金を払うといつもより長く入ってしまうのは貧乏人の性だ。暑かった〜と浴室奧の水風呂。と横にタイル張り個室のシャワーブースがあるので入るとタイルに水音が反響する独特の空間。ユニークな銭湯だなと水風呂を見ると、半分が寝風呂タイプになっている。寝そべって水風呂って・・。とまどいながらもとりあえず試す。まあまあ。

脱衣場は奥行きがあり、手前にアイスの冷凍庫、壁側が冷蔵庫とその上にお菓子などもある物販の棚、オシドリロッカー、サウナと続く。その対面の男女仕切り側には四角テーブルを挟んで床几が1対、丸テーブルを中心にソファーといかにもリラックスできそうな空間。週刊ポスト、現代、新聞が並び、たばこ盆にアメちゃん。おお、アメを自由に食べられるんだ。物販棚には同じものがあったので試食して気に入れば袋入りを購入という算段。天井からつるしたタオルはレトロ。ご主人は写真が趣味らしく祇園の舞妓さんなどの写真が壁に飾られている。

浴室前スペースは3段差、天井が高く湯気抜きのような天窓がついている。浴室境のガラスは松や東洋風の風景を描いたエッチングガラス。浴室は四角錐の銀盤天井に大きな湯気抜き、男女壁の上部は数種のブロックガラスを組み合わせてハイカラ、男女壁側に浴槽が半円状に並んでいるが、個浴槽が半円からはみ出す細胞分裂のイメージ。浴槽枠は小豆色タイル、カラン台は御影。そのカランはシャワーが少なく、一つおきにシャワーとステンレスのゴミ箱がついているスタイルも珍しい。非常に個性的な銭湯、次はご主人秘蔵のカセットテープがBGMで流れている時に入りたい。