万代湯の入浴記

所在地・交通 大阪市住吉区万代6-9-26
休日 火曜日
営業時間 15:30-0:30

印象・規模 昔ながらの大阪の風呂屋の風景が感動的。カランは7席。
湯船・お湯 男女壁沿いに上がり湯、深風呂、浅風呂、奧の壁を掘り込んで洞窟風ラドン電気風呂。
ラドン電気風呂 バリバリ型。岩を積み上げて洞窟風にした電気風呂。看板にはラドン温泉と書かれてある。

感想

2004年9月 木曜日16時

万代湯

千躰の交差点からあべの筋を北に400メートル、左手にトヨタカローラがあるのでそこを西に曲がるとすぐのところに万代湯。モルタルに木枠の和風建築にデコレートされたファザードが特徴的、(R)マークのついた「ラドン温泉」の看板がアヤシイ。

玄関スペースには珍しいコンドル錠の傘入れ付き下足箱、たたきは玉石タイル、男湯は右側。脱衣場は昭和を感じさせるチープレトロ、天井は茶みどりのマーブルなベニヤ(ってどんなんやねん。言葉で表しにくい・・)、おしどり板錠のロッカー、招き猫、亀井機械製作所の体重計、朝日新聞の広告板に大衆演劇の芝居小屋「朝日劇場」のポスターが張ってあるのはしゃれが効いている。

浴室前スペースは段差なし、床は玉石タイル。浴室に入って、ガツーンとカルチャーショックを受ける。大阪の銭湯は浴槽周りに「かて」(腰掛けのようなもの)がついていて、そこで浴槽からお湯をくみながら体を洗う習慣があるのだが、万代湯では見事なまでにその「昔ながらの風呂屋の風景」が広がっていたからだ。湯気抜きから日光が差し込む昼間、浴槽周りで2人の年寄りがあかすりをしている、ジェットなどの設備のない銭湯だから聞こえるのは湯をくむ音と洗面器のコーンという音だけ、静かに静かに時間が流れる。

浴室の天井はピンク、小さいが縦に細長い湯気抜き、床は石畳でそのあいだ10センチほどの目地部分を群青と白の市松モザイクで埋めている。浴槽枠もカラン台も石、これまで見た中でもっとも石材を多用している銭湯ではないかしらん。壁は白タイルにモザイクのライン入り。湯船周りで体を洗う習慣がしっかり残っているからかカランの数は7席と少ない。

男女壁には富士山の遠景が描かれた3×4のタイル絵の小品。しばし湯船に浸かって眺める、浴槽の床は玉石タイル。奧には洞窟風のラドン電気風呂といういかにもアヤシイ浴槽がある。天井はモザイクタイル。「ラドン開発事業団直系 日本温泉医学研究所」と署名された看板にはラドンに浸かればすべての病が治りそうなことが書かれているが、まあ、病は気から、信じるものは救われる。しかし、「直系」ってアヤシイ・・。

この銭湯を訪れたのは、Michikenさんの掲示板でchetさんがフタのついた上がり湯がある銭湯のことを書かれていたことに興味を持ったからで、この「上がり湯」についてちょっと説明。浴室を入ると男女壁をぶち抜いた形で、手前に石の水槽、その奧に湯槽がある。この湯と水、二つの水槽のことを「上がり湯」「おか湯」とかいう。湯槽には冷めないように木製のフタがしてあるが、手桶でくみ出せるように小さな穴が開けてある。最初、この湯を汲み出して足にかけたらやけどするくらい熱くてビックリした。あとで聞いたところによると洗面器に湯と水をそれぞれ入れて自分の適温に調節してから使うとのこと。だから熱い湯が好きな人のために熱湯を用意して、冷めないようにフタをしているってことなのだ。この上がり湯の習慣もカランシャワーや水風呂の普及でやる人が少なくなってきており、住吉区で私が入ったことのある3つの銭湯を比較すると、万代湯は昔ながらの形を守っていたが、大和湯は湯槽が熱湯でなくぬるま湯になっており、牡丹湯は利用者がいないので湯槽にお湯を張っていなかったと3者3様だった。そういう意味では万代湯が一番、古風な大阪の銭湯を味わえると言えるのだろうか。