2004年6月 水曜日の15時
JR阪和線の美章園駅を下りて雑多な商店街をぶらついているとすぐ大きな建物が目についた、美章園温泉である。線路高架下の商店を中心に闇市的に発展してきたこの界隈であるが線路向こうは再開発のためフェンスで囲まれた空き地が広がり、線路を挟んで東西のコントラストがはっきりしている。
隣は理髪店。左右を塀で囲んで中央入口の上は巨大な植木鉢と重厚さとユーモアを兼ね備えた外観。外観はスクラッチタイルだというが樹木が茂りすぎて、塀の中はさながらジャングル。提灯がかかった入口をくぐると玄関スペース。のれんのかわりには巨大なタペストリーが掛かっており、「湯」の字が躍っている。玄関スペースから漆喰壁と黒光りする木柱に加えてシャンデリア。券売機で入浴券を買って番台へ。
玄関がシャンデリアだから脱衣場は言わずもがな、立派な洋館建築。いちいち細部を説明していたらきりがない(と言って逃げる)。とにかくオシドリロッカーが壁側と大阪風の島ロッカー2つをあわせて118個だから、規模もかなり大きなもの。店の前で見たら塀の向こうに木々がモクモクしていた部分が前栽で、大きな池がある。その前にベンチとマッサージ機が3つ。湯上がりが楽しみな銭湯である。奧に化粧室が独立してあり、そこから2階への階段。今は途中で閉鎖されているが、以前はダンスホールへ続いていたとか。
浴室前は段差なし、浴室も広く立派なもの。ラドンがあるところなど最新とは言えないものの昭和前期のモダンさを残す脱衣場に比べると、本来の意味でのモダンである。左右の壁にカランで、中央に小判型の主浴槽、奧に各種浴槽群で左奧にサウナやラドン、水風呂の付加スペース。浴室入口には円形噴水に子ども3人がたわむれている石像がある上がり湯、これは昔からありそうだ。中央の主浴槽は大阪によくある奧から手前にかけて段々になっているタイプ。一番高いところでは3つの曲型パイプからお湯が出ておりハイカラだ。浴槽枠は御影で湯吐き口だけが赤御影だ。天井の湯気抜きが特徴的でこれは建物の裏から見るとなるほどとよく分かる。美章園温泉は正面の外観もすごいが裏から煙突を眺める角度から見るもの乙なものだ。そこから見るとずいぶん敷地が大きいことが分かるが、その中庭のつたの絡まり具合はがラドン風呂などからガラス越しに見える。そのラドン風呂、ボックスになっており湯はぬるいしあまり入る人もいないので格好のカラオケ練習場、壁もグレーと赤いタイルでまるでロシアン・アヴァンギャルド。これが下町の普段使いだというのがいいじゃない。
|