安来湯の入浴記

所在地 紫野上野110(市バス46系統「大宮上野」下車東)
休日 金曜日
営業時間 16:00-23:00
湯上りの感想
規模・座席数 何かただものではない雰囲気の銭湯、16席+カラン2席。カラン前イスなし。
普通の湯船 浴室正面奥に浴槽群、深い湯船・浅い湯船は水中てすりで隔てられている。
浅い湯船は浴槽床に鯉のタイル、茶色に黒のまだらの魚だが、鯉なのかな?
深い湯船はライオンの口から湯が滝状に流れ、その下にネオンが瞬く趣向。
ジェット風呂 浴室正面奥右にジェット2基の湯船。
薬用泡風呂 名古屋の増山自然堂という入浴剤の会社の看板に「高級温浴」と記載。酵素系入浴剤。
印象 2000年11月
日曜日に図書館で調べもの、というと京都では仏教大学が便利。開館時間は朝9時から20時まで、学外の人も利用できるので時々使わせてもらう。
今日は仏教大学の自転車置き場から自転車のペダルを一回も漕がずに銭湯に行こうというチャレンジ。千本今宮にある仏教大学の自転車置き場は高台の上、そこから今宮通は下り坂なので快適に飛ばす。左手に今宮神社を見たら次の信号を北(左)に曲がる、とそこら辺でペダルを漕いでしまった、無念。そこから北に100メートル、大宮上野というマイナーな停留所近くに安来湯発見。
外観は威風堂々さとも町屋風情とも縁のないチープなレトロさ。以前から何回か店の前までは来たことがあり、「安来湯」という屋号がいつも気になっていた。個人的に「安来(ヤスキ)」といえば安気節を思い出す。ご主人が島根出身で島根県安来郡の民謡・安来節から屋号をとったのかな、と想像していたが、全く違っていた。
「安来」は「ヤスライ」と読むらしい。「やすらい祭のヤスライですわ。まあ、昔の人がつけたんやから、当て字やけど」とご主人がおっしゃった。そういえばすぐ近くにある今宮神社は「やすらい祭」で有名なはず。広隆寺の牛祭、鞍馬の火祭とともに 京都三大奇祭に数えられる。
なるほど、聞いてみるもんだ。町名とかではなく、祭の名前を付けるなんて洒落てるなあ。
では一通り銭湯紹介。
暖簾をくぐるとタイル系の玄関。男湯が右。番台は木製のレトロタイプを現役で使っている。番台スペースより脱衣場スペースは一段上がっている。
まず脱衣場を見渡すとお城の写真を飾っていることに目がいく。城マニアしか知らないような地方の城が多い。こういうオリジナルな企画ものに巡り会うというのが銭湯巡りの醍醐味だ。
入口側に休憩スペースがあって、フォーカス、現代、文春、新潮の各週刊誌、とスポニチ。
お風呂ドリンクは「いづみ」ブランドが珍しい。
ロッカーなどは新しいタイプに変わっているが、隅の方に昔の面影が残る木製ロッカーが。
浴室前上部はささやかながら軒が付いている。
浴室にはいると掛かり湯漕が正面にあり上にちょこんとリスの置物が乗っていて、いらっしゃい、って感じ。薬用風呂を除いて湯船は浴室奥にかたまってある。カランは両サイドと中央に島列カラン。こじんまりとした浴室である。
カラン前のイスは無いしレトロタイプだが、カランの横には御影石の板で桶置きスペースが付けてある。これは初めてみた。シャンプーなどを沢山持ち込む人には便利だ。恐るべし安来湯、レトロという言葉で語るにはあまりにも斬新な趣向。
水風呂がないのも珍しい。白湯の湯船しかない銭湯でも水風呂はついているところが多いのだが。
体を洗って、カランの逆三角形のコックを横から眺めるとコブラの鎌首みたいに見えるなあ、とかたわいもないことを考えながら、湯船に浸かってゆっくりする。
いつもなら水風呂と交互にはいるが今日は湯船のみ。
内観は白タイル。桶は浴室内ではなく浴室前のスペースに用意されている。

脱衣場で服を着ながら目が釘付けになったのは昔の料金表。番台の上に額に入って飾られているのだが、「料金定 大人五銭・小人参銭・乳呑児弐銭」とある、大正九年と十年のものだが、今に比べて子ども料金が大人に比べて相対的に高いなという印象。京都府警察署から京都湯屋聯合會への通達らしいが、銭湯でも公衆浴場でも風呂屋でもなく「湯屋」と表記しているのがいいなあ。
隣には昭和二年版の入浴時の注意書も飾られている。内容は現在とほとんど同じ。伝染病についての表記が放送コードに触れるくらいか。
安来湯は明治末年ぐらいからやってるらしいので、今では北区で一番古くからやってるのではないか、少し北に行ったところの牛若町には牛若丸が産湯に使ったと伝承のある井戸にちなんで牛若湯というのがあって古かったけど廃業された、とご主人に教えていただいた。