新シ湯の入浴記

所在地・交通 東山区古門前通大和大路東入3丁目古西町316
休日 金曜日
営業時間 14:30-0:30

印象・規模 写真と絵画のギャラリー銭湯。番台式、男湯右側、カラン13席+島カラン3席。
湯船・お湯 男女壁沿いに脱衣場に出張って薬用泡風呂、深風呂・すわり風呂の複合深風呂、電気風呂・寝風呂・ジェットの複合浅風呂。奧に水風呂と壁を隔ててサウナ。
サウナ 浴室奧に壁を隔て階段を上ったところにある、4名程度、BGMはJ-POP、熱めでマット敷き。
水風呂 サウナの前、ライオンがチョコレート色でビター。
ジェット風呂 複合浅風呂に。
寝風呂 複合泡風呂に、冷水管枕付きでジェットと底から泡。
電気風呂 固まるドクドク型。
すわり風呂 複合深風呂に、土踏まずとふくらはぎ刺激も。
薬用泡風呂 脱衣場に出張って、泡勢いよい。

感想 2004年8月水曜日の23時


「東山区古門前通大和大路東入3丁目」というのが、組合のサイトにも記載されている新シ湯の住所なのだけど、これは難易度が高い。大和大路とは縄手通りのことでギオンの南北メーンストリートの一つ、京都人なら「古門前通大和大路東入」と聞くと「ああ、縄手から古美術屋の通りを東入ったら新シ湯やね」と早合点してしまうのが落とし穴。住所の最後に「3丁目」とあるように3町分・300メートル歩かなくてないけない。どちらかというと「花見小路古門前通東入ル」か「東大路古門前通西入ル」の方が距離が近くて分かりやすい。このあたりは場所が離れていても大和大路が南北の基準になってるのだろうか。


祇園というよりも古美術屋の通り、知恩院前の落ち着きを持っている新シ湯界隈。東隣が駐車場なので輪郭が浮き上がってくるような白レンガ囲みの新しい外観に効能書きのネオン看板がカラフル。関西にしては短めののれんの向こう、自動ドアを開けると横に広〜い玄関スペース。男女のトイレは玄関の両端に付いている。と、男湯からパンツ一丁の若者がトイレに出てきた。玄関で裸を見るとちょっとうろたえるぞ。鶴亀の緑マーブル色の下足箱は脱衣場側にはめ込み、壁には絵画が飾ってある。


脱衣場は第一印象がカラフル、絵画や写真が所狭しと飾ってあってギャラリーのようだ。舞妓さんの写真が多いが、それは何年か前の八朔(8月1日)に祇園の芸舞妓さんがあいさつ回りをする姿を写真が趣味のご主人が撮ったのだとか。絵画は長年かけて買い集めたもので、風景画やこれまた舞妓さんの絵も多い。手前にはサトウハチローの色紙、奧のテレビの横には大黒さんやカエルの木彫りがあったり目を楽しませるアイテムが豊富。


おもしろいのは脱衣ロッカーと貸しロッカーが交互に並んでいるロッカー配置、貸しロッカーは男女壁側のドライヤーカウンターの下にも並んでおり、常連率の高さが分かる。体重計はヤマト、「おしづかにお上がり下さい」と柱部に書いてある。「お静かに」というのは私の好きな京言葉で、騒ぐな、静かにというよりも「ゆるりと、お気をつけて」という気遣いのニュアンスだ。あと、柱に休日を示すカード入れがかかっている、ボート場で「今月のレース開催日」などと表示しているアレだ。ホワイトボードにも休日が書いてあったので、ここの常連さんに定休日をよく間違える人がいるのかもしれない。


浴室前はレンガ調の3段差、薬風呂の出っ張り部分の腰回りタイルには洋風の模様タイル。浴室は白く低めの天井、壁は淡いグレーの寒色系、床は淡いベージュの暖色系、浴槽枠の淡い小豆色の四角タイルと相まって今風の落ち着いた雰囲気。それをところどころに色をチラしたモザイクタイル仕上げの3本の太い柱、上の部分はクラッシュタイルで遊んでいるのだが、ちょっとした工夫で華やかにしている。カラン台は赤御影、側面はステンレスパネル。


客層は23時過ぎに入ったからか若い人が多い印象。久々に男女壁を越えて夫婦で会話している人を見た。音が反響して他人には何を言ってるか分からないのに本人同士は分かっている、夫婦だなあ。男女壁に沿った浴槽は角が丸まって、円形風呂のような感じ。大まかに深風呂と浅風呂に分かれており、さらに一人一人の入浴スペースに仕切られている個浴タイプ。小さいながらも全部入るとのぼせちゃうよ。
サウナも熱いが、お湯も新しい浴槽設備のわりに熱め、電気風呂は個人的に「固まるジーン型」と呼んでいる内蔵を刺激する強力タイプで、苦手な人はショック死するから入らないように。


屋号の新シ(あたらし)湯というのがまた珍しい。「新シ」というカタカナ混じりは戦前のもので決して新しくない、古い近代建築を見て「モダンだなあ」というのと同じである。番台の奥さんに「町名が古西(ふるにし)町なのに新シ湯とはこれいかに」とベタなことを尋ねると、昭和23年にここに移ってきたときにはすでに新シ湯だったから由来は分からないとのこと。ちなみにこの銭湯、女湯の方が広くて、浴室中央に楕円形の湯船があるゆったり設計らしい。これは祇園が近く女性客が多いからではなく、「昔、子どもが多かった時分は、子どもは母親と一緒に入るから必然的に女湯が混むから」だそうだ。いやはや、勉強になりました。そんな話を聞いてから玄関スペースを見直すと、男湯と女湯の幅が全然違う! なんか感動だなあ。