南京への意気込みをブログに書いてから、失敗続きで困ぱい。
まず武漢があんなに大きな都市だったとは。新疆、チベット、雲南と地方都市ばかりを旅していたので道路に「渋滞」なるものがあることを忘れていた。行きに15分の道だったので帰りは1時間あれば間に合うとバスに乗ったらみごとに南京行きの夜行列車に乗り遅れた。途中でバスを降り、「歩道も走ってくれる」バイクタクシーを捕まえる選択肢をちゅうちょした判断ミス。
明日の便まで一日待つのは嫌だったので南京行き切符を無駄にして、合肥行きに飛び乗る。しかし体調が悪かったのか満員の硬座で10時間という悪条件に耐えられない。そこで朝4時という時間も省みず淮南で途中下車。淮南は豆腐発祥地の言い伝えがある、豆腐好きの私にとって少しは縁があるところだ。
駅前で客引きのタクシーを「太貴了」と切りまくっていたら、タクシー代と宿代合わせて15元で連れて行くという青年がいたので彼のタクシーに乗る。すると彼が「金は要らないから家に泊まってくれ。友達になろう」。・・やばい、やばすぎる!知らない人の家について行っちゃダメとお母さんも言ってるでしょ、でも、好奇心には勝てない!と彼の住む小区に立ち入る。
彼の家で仮眠してから一緒に市場に行って牛肉面と餅を食べ、食材を買出し。彼が料理を作ってくれているあいだ近所の人と話す。外国人、それも「ミシミシ、ヨシヨシ」でおなじみの日本人が来たとワラワラと人が集まってくる郊外の庶民的な町。彼は一人暮らしなのに部屋が4つもあるので日本じゃ考えられない広さだ言ったら近所のおばちゃん連が先を競うように「彼のは一番狭い。私の家が大きいから見に来い」と案内してくれる。
私が食べたかった長江の魚料理などをつつきながら、アルコール度数55度の白酒を飲む。なぜか戦争の話になってしきりに「日本人は戦争が好きだろう」とニヤニヤするので閉口した。「日本は60年前から戦争していないけど、中国は朝鮮、チベット、インド、ベトナム・・、戦争好きで忙しいねえ」とよっぽど嫌味を言ってやろうと思ったが彼らはそのように教育されているのだから仕方がない。二人ともかなり酔ったあと「やばい予感」がひとつ的中。漢民族のわりに物腰が柔らかく料理もうまい彼は私の寝込みを襲ってきた。そう、彼はゲイだった。そういえば今朝、「女はめんどくさいから彼女は作らない」って言ってたなあって、おいおい、こういう意味だったのか。譲るところは譲り、譲らないところは譲らない主義の私は彼の求めを無難に乗り切った。
なんだかよく分からない状況に泥酔してしまったのだが、一緒に観光する約束をしていたので彼のタクシー仲間を呼び、3人で出かける。まず、中国銀行で両替をしようというので私は酔っているから今日はやめておくと言ったが結局行くことに。2万円を人民元に両替してから、八公山豆腐を食べに行く。メニューすべてに豆腐の文字が躍り、どれもうまかったが如何せん酔っていて記憶があいまいだ。皮が豆腐の餃子もあったし、スープもいろいろ・・。
酔ったら汗を流そう!と浴池へ。いつも私が行くシャワーだけの貧乏くさいのではなく、都市型スパというべき個室があってベッドで仮眠できるゴージャスなところ。大きな浴槽があってジャングルをイメージした趣向が凝らしてある。二人はそれまでげろを吐くほど飲んでいたのにもう酔いがさめたのか浴室に降りていったが私は勧められるままにベッドで寝た。その時点でパンツのファスナー付ポケットには両替した2万円が入っていたのだが・・。酔いが覚めるまで寝て、汗をかいたので部屋に戻っていた二人と浴室で汗を流して帰り支度。部屋を出てフロントで靴を履いているときに2万円がなくなっていることに気づいた。驚いて彼らに言うと、寝ているときに店員に取られたんだと答える。それなら部屋にもどって探すと引き返そうとすると、列車の時間があるから急ごうと言われる。何か釈然としないながらも彼らと一緒に駅に向かった。結局、店員が盗ったのか彼らが盗ったのか分からない。彼は朝から晩まで別れてからの切符代まですべておごってくれて、また金の問題でなく楽しかったから疑いたくないのだが、なんか全面的に信じられない怪しい点がいくつかあるんだよなあ。自分が人を疑う状況に置かれる、こういうのが一番嫌なのだ。
それはそうと盗った人間はプロである。パスポートや当面の小銭が入った財布や日本円には手をつけず、両替したばかりの人民元と上着の小銭だけを盗っている。財布やパスポートのほうが目立つ場所においてあったにもかかわらずである。もし全財産やパスポートがなくなったら必ず公安に行くし、日本円を盗れば両替するときに足がつく可能性がある。
やられたなあ、でもまああれだ、原因は酒だ。飲んでも飲まれるなっちゅうやつだなあと南京行きの列車で落ち込んで近くの乗客に話していたら、美人の服務員が座席指定のない私に特別に席を探してくれた。やっぱり美人はやさしい。この定説は日本よりも中国ではさらに当てはまる。南京には深夜2時半に到着。隣の部屋のいびきがそのまま聞こえるような「豪華単人間」(デラックスシングルルーム)を30元に値切って泊まる。